ふぐ料理と栄養
1、ふぐ料理 2、ふぐの栄養 3、ふぐの調理方法
ふぐの皮引き(wmv5,42MB)動画ダウンロード
鳳凰(てっさ)の作成動画をyoutubeにアップロードしてあります
youtubeにさめ皮引きの動画をアップロードしました。
https://www.youtube.com/watch?v=3IYL1GuwxXE
1、ふぐ料理
料理は文化であり、
時代とともに人々にゆとりが出来てくると、
いろいろな料理方法が考案されてきて、バリエーションが豊富になってきます。
そのことが、人々の食生活を豊かなものにしてきます。
ふぐの料理界でも最近いろいろな料理が考え出されてきています。
てっさ、てっちり、雑炊などと言ったところは昔からのメニューですが、
最近では焼きふぐ、から揚げなどが好まれています。
では順を追って説明していきましょう。
◎てっさ(ふぐ刺し)
てっさアニメーション
ふぐの刺身のことで、てっぽう(ふぐのこと)の刺身だから、てっさと言います。
ふぐ料理の世界では、ふぐの刺身を造るのに、ふぐを切るとは言わないで、
てっさを引くと言います。
上のアニメーションを見てもわかるように、引いて切っているのが解ります。
ふぐの身には粘りが有ってこのように引き切りでないとうまく切れません。
切り方には一枚引きと二枚引きがあって
このアニメーションの場合は一枚引きです。
二枚引きは一回切った切り身をもう一度、観音開きに切り開く方法です。
世間一般では、菊盛りがほとんどです。菊盛りは左回り。
菊盛り
ともえでは、一文字菊に引きます。一文字菊は右回り。
一文字菊
この引き方は私が考え、一文字菊と命名しました。
また、一文字菊は花の形から御紋章菊とも呼ばれています。
一文字菊は一枚一枚の花弁が肉厚で、私も一枚のてっさを厚みと薄みの変化を持たせ、
一枚のてっさにて充分ふぐの味を楽しんでいただく為に引きます。
ふぐ本来の味を楽しめるのにはこの引き方がベストであると思っております。
鳳凰は、
京料理展示大会(京都料理組合主催:毎年みやこメッセにて開催。)の時にしか引きません。
鳳凰(平成24年京料理展示大会出展)
拡大
鳳凰(てっさ)の作成動画をyoutubeにアップロードしてあります
鳳凰はすべて私自身で考案し、図柄、引き方を完成するのに、2年の歳月が掛かりました。
鳳凰は一枚引き、二枚引き、菊盛り、一文字菊等で引いてあり、てっさの引き方の集大成です。
拡大して見て下さい。
てっさは一枚づつ重なっています。重ねてゆく順番は決まっています。
どこから始まっているか分るでしょうか?
そして、それぞれのサイズが違います。
この皿は、直径45cmの皿です。
ですから、一文字菊と鳳凰は私独自の作品です。
世間一般の調理人さんは知りませんので、悪しからず!
(各地のふぐ料理講習会で、一文字菊は教えておりますが、鳳凰は難しくて教える事が出来ません。)
てっさは、ポン酢で頂くのが通常ですが、
当店では、ふぐ本来の味を楽しむ為、
塩(伯方の塩:フルール・ド・セル)のみでいただくと言う事も薦めております。
◎てっちり(ふぐちり、ふぐ鍋)
ふぐのあら身などを季節の野菜とともにいただく鍋料理です。
ふつう、水に昆布でだしをとり炊けた後、ポン酢でいただくと言う、ちり鍋が一般的です。
◎焼きふぐ
ふぐは非常に淡白で繊細な味を持っているので一般的に、
塩焼きがいいかと思います。
その他、骨付き身やトウト身(皮と身の間の内皮)の焼きもあります。
いずれも、塩と一味のみの下ごしらえで出します。
◎から揚げ
から揚げには色々な揚げ方があるが、
淡白なふぐには油が非常に相性がよく、最近はかなりの注文があります。
◎てっぴ(ふぐ皮)
ふぐ、特に皮には、高級たんぱく質であるコラーゲンが沢山含まれています。
しかし、ふぐの皮には無数の棘があって、そのままではとてもじゃないが食べられません。
さめ皮(ふぐの外皮)
拡大
拡大して見て頂ければ判る様に無数の棘があって、そのままでは食べられません。
その皮を食べられるようにするのには、皮引き(さめ皮引き)と言う作業が必要です。
トラフグの棘 200倍
拡大
拡大して見て頂ければ判ると思いますが、
トラフグの棘には、4本ないし5本の「根っこ」の様な芯が生えています。
先端は丸く見えますが、実際には非常に鋭利で、触れば突き刺さります。
ふぐの皮引き(wmv5,42MB)動画ダウンロード
youtubeにさめ皮引きの動画をアップロードしました。
https://www.youtube.com/watch?v=3IYL1GuwxXE
ふぐの皮引きと言う作業は簡単そうに見えますが、大変な技術が必要です。
動画のように約1ミリという薄い皮を全く歪みのないまな板に貼り付け、
皮の中間、棘の芯の真下に包丁を入れ、引いていきます。
力任せに包丁を入れていくと、棘の芯が残ります。
又、棘を切ってしまうと包丁が切れなくなる事がありますが、それは、腕が悪い証拠です。
ご覧のように、ともえでは特別の柳刃包丁でさめ皮を引いていきます。
少しでも棘の芯が残っていると舌触りが悪く不味い物となります。
又、棘は非常に硬く消化できませんので、残っていると胃壁を傷つけることもあります。
包丁人の真価が問われるところでもあります。
ともえではお客様にこの「皮引き」を見てもらう事ができます。
皮は塩もみをして、湯引きをした後、細く刻んでポン酢で戴きます。
てっぴは一番外の皮の部分ですが、その内側にトオトウ身と言う部分があります。
トオトウ身はどちらかと言うと筋肉部分に近い部分で、いわゆる内皮です。
湯引きしてポン酢で戴きます。
トオトウ身は遠江(とおとうみ;昔の地名)と言う地名から由来しています。
なぜだか解るかな〜。
答え:三河(身皮;昔の地名)に近い部分だからです。
◎白子(ふぐの精巣)
白子は季節物でだいたい12月ぐらいから4月ぐらいの間しか捕れません。
生白子、焼き白子、鍋白子が主なメニューですが、
揚げ物や和え物に利用しても美味しいです。
白子は大変栄養価が高く、滋養強壮に最適です。
「類を持って類を補う」の喩えどうり。
◎煮こごり
煮こごり
一般に煮こごりとは、魚介類、又はゼラチン質に富む肉類を煮た後に、自然と固まった物を言います。
ふぐの場合、骨身や皮などを煮た後など、冷蔵庫で寝かせた時、固まったものを煮こごりと言います。
ともえでは皮と切り身を煮て、作ります。
添加物のゼラチンや寒天などは使用しません。
ゼラチンなどを添加して作ったものはゼリーです。
◎寿司
てっさの身のにぎり、白子のにぎり(軍艦巻き)等。
お持ち帰りには笹寿司なんかが喜ばれています。
◎ヒレ酒
ヒレは血抜きと粘液の除去は完璧にしなければ、生臭いものとなります。
血抜き1日目
血抜き2日目
血抜き3日目
血抜き4日目
ヒレは二枚に割き、3、4日水に浸けて完全に血抜きをし、天日(太陽光線)にて乾燥させます。
完全に乾燥させたものは、保存状態がよければ1年でも2年でも保存がききます。
ともえでは、3年以上熟成させたヒレで、ヒレ酒を造ります。
血抜きが不完全であると生臭いものとなります。
ヒレはこんがりと狐色に焼いて、超熱燗を注いで戴きます。
上等のヒレ酒は、香りも味も最高のもので少しでも質が悪いと生臭く感じます。
◎雑炊
ふぐ料理で最後に雑炊を食べない人は、ふぐの味を知らない人だと言われるぐらい、
ふぐ雑炊は雑炊の中では最高のものと評されています。
てっちりを戴いた後のだしに塩とポン酢で味を整え、ご飯は焚き過ぎないようさっくりと仕上げます。
◎ポン酢について
ポン酢に付いては各お店のこだわりがあるようですが、
ともえでは食用酢は使わず、スダチ、ダイダイ等の柑橘類を混ぜ合わせて作っています。
柑橘類は2年以上寝かし、熟成をさせます。
作り方は秘伝。
と言うのは嘘です!
(本当は誰にでも教えております。ご来店頂ければお教えいたします。)
ポン酢を作る時にはかなりの神経を使います。
ともえではいっぺんに一升瓶12本ぐらいのポン酢を一度に作りますが、その量の内、
柑橘類、醤油が大さじ一杯多いか少ないかで味が変わってしまうほど微妙なものです。
なお、ともえでは昆布や鰹節等のだしは入れておりません。
ふぐ本来に味があるので、だしは不要で、邪魔になります。
2、ふぐの栄養
ふぐは高蛋白質、低カロリーのヘルシー食品です。
しかも、ふぐの蛋白質はゼラチン質を多く含み、
コラーゲンのカタマリと言えます。
特に皮の部分に多くのコラーゲンを含み、美容と健康には最適な食品と言えます。
そして、脂肪はほとんどゼロで太りすぎや生活習慣病など気にする人には、
絶好のダイエット食と言えます。
昔々のお話。
重い病で、もうだめだと医者から言われた人が四国巡礼の旅に出ました。
でも体は悪くなるばかり。
「ええい!もうヤケクソや、ふぐでも喰うて死んでもたろ。」
四国ではふぐが沢山獲れますから、せっせ、せっせとふぐを食べたところ、
あら不思議、あんなに酷かった病気が治ってしまいました。
めでたし、めでたし。 |
五十にて鰒(ふぐ)の味を知る夜かな 小林一茶
と言うのがあるが、この句の意味は2通り有るかと思います。
私なりの解釈ですが、
「いままでふぐを食べてきたが、50歳で初めてふぐの味がわかった。」
もう一つの解釈は、
「ふぐは怖いもので、今まで食べられなかったが、もう、老い先も短いから、
世間で絶品の味を持つと言うふぐを食べてみようかな。なんじゃこりゃ!旨いやんけ!」
そして、一茶は五十を過ぎてから結婚しました。
そして、子供が3人もできました。
ふぐはコラーゲンたっぷりですから元気になって、夜も励んじゃったんでしょうね。
めでたし、めでたし。
3、ふぐの調理方法
ふぐの調理方法を教えることはできません。
教えるのに、1年や2年では無理であると言う事と、
ましてこのようなホームページ上や本などで完全なる除毒方法を教えることなど到底不可能で、
軽々に教える事は大変危険なことなのです。
ふぐを調理する為にはまず、ふぐの毒性を把握していなければなりません。
ふぐは種類により有毒部位が異なります。
ふぐの種類も非常に似通ったふぐもあり、素人には鑑別が不可能です。
素人料理が一番危険なのです。
釣り人が釣ってきたフグを調理し中毒事故を起こす例が非常に多いのです。
たとえ、料理店であってもふぐの取扱い免許の無い者は素人と言えます。
平成20年度食中毒の事例(厚生労働省発表)を見てみると、
食中毒全般での患者数は24430人で死者数4人
その内、ふぐ中毒での患者数は56人で死者数3人です。
そのすべてが素人料理で、いかに素人料理が危ないかがわかると思います。
最近、ネット上で、ふぐの処理を動画で配信していますが、非常に危険な事であります。
素人がまねをして調理する事があります。
太公望等と称される釣り人の多くは、大抵が非常に立派な包丁を持たれています。
ご自分で釣ってきた魚を調理し友達に食べてもらうのが喜びだと言われます。
ふぐの場合は是非とも止めていただきたいと思っております。
京都府の場合、
1年以上ふぐ処理師の下で調理勉強を積み、
京都府実施の試験に合格した「ふぐ処理師」でなければ、
ふぐを取扱うことは出来ません。
条例に違反した場合は、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。